米国経済は好調なのにテック企業でリストラが続いている理由 – CNBC の動画紹介 [後半]
どうも。gochaです。
前回の投稿に続き、動画の後半の紹介と僕の見解をまとめようと思います。
紹介する YouTube 動画は、CNBC の 「Why Widespread Tech Layoffs Keep Happening Despite A Strong U.S. Economy(なぜ、アメリカ経済は好調なのにテック企業でリストラが続いているのか)」です。
チャプター
前回紹介した ②、③ も含め、気になるトピックスに簡単にジャンプできるように、動画のチャプターをシェアしておきます。
- 0:00 … Intro(はじめに)
- 2:26 … Hiring and firing(採用とリストラ)
- 4:24 … The AI effect(AI の衝撃)
- 7:15 … The end of cushy tech jobs?(快適なテック系ジョブの終焉?)
- 9:50 … What’s next?(次に起こることは?)
動画の要点
今回紹介するのは、上記チャプターの後半部分「④ 快適なテック系ジョブの終焉?」と「⑤ 次に起こることは?」の要約です。
④ 快適なテック系ジョブの終焉?
高額な給料と無制限の特典の輝かしいイメージを持っていたテック産業は、最近の技術者解雇の話でそのイメージが完全に砕かれた。
Cloudflare を解雇された営業職の女性 Brittany Pietsch 氏は、次のように語る。
「今回の出来事を公にしたことは、本当に後悔していない。より大きな絵を見ることができたと思うからだ。20年、30年前に解雇された人々から聞いた話を通じて、似たようなことを経験した人々のための声になることができた。彼らは今でもどんな気持ちにさせられたか、嫌なことだったかを覚えている。こういったことに光を当てるべきだと思う。だから私たちは変わる必要がある。さもなければ、何も変わることはない。」
テック系リクルーター兼キャリアコーチの Farah Sharghi 氏は、次のように語る。
「解雇のようなトピックスを公にシェアすることは、部分的ではあるが、TikTok や YouTube ショートといったソーシャルメディアの台頭の事実によるものだと思う。自分の経験をシェアすることに対して、人々はますます慣れてきている。また多くの場合、人々は解雇されると、恥ずかしく感じる。しかし実際には、解雇は、その会社のリーダーシップの失敗であることもある。」
Cloudflare は、CNBC がコメントを求めたが、返答していないようだ。
自分自身も技術者だが、数字に責任もあるし、数字がパフォーマンスとされる部分もある。そのため、このようなことが自分にも起こりえるだろうと考えていて、日々、自分の能力を上げながら仕事をするのが非常に重要になる。
そもそも、アメリカの企業で働いている場合、今この時点でクビを宣告されても文句は言えない。いざというとき、そのような切り捨てができるから経営者は給料を上げられるわけであって、アメリカで働いた場合の給料が、他の国で働いた時に比べて高いとされている理由だ。
つまり、メリットだけでなくデメリット、リスクもあるわけで、それを受け入れたうえで生き残らなければならない。
若くもない、留学経験があるわけでもコネがあるわけでもない日本から来たおじさんなどは、真っ先に目の敵にされてもおかしくない。
テック企業が広範囲にわたる解雇を行った後、その株価は跳ね上がった。
テクノロジー重視の NASDAQ は、2023年に 43% 上昇し、2020年以来最高の年となった。
Meta は大手テクノロジー企業の中で最も大きく上昇し、194% 以上の急騰を見せた。テクノロジー株のブームはまた、テクノロジーの億万長者たちの富を押し上げるのにも役立った。超富裕層の CEO は、2023年に 48% または6580億ドルの富を増やした。
Google の CEO である Sundar Pichai 氏は、次のように語っている。
「25年間、このような事(リストラ)をしてこなかった特に Google のような企業にとっては難しいことであるが、私たちは常に従業員のことを深く気にかけてきた。」
CNBC の当動画では述べられていないが、Google を完全な悪者にするのはフェアではないと思う。Google もできる限りのことはしているように感じるからだ。
例えば、過去の事例にはなるが、Google 公式ブログでは、以下の4つの点をアメリカの従業員向けに発表しており、他の国においても現地の法律や慣習に従い、従業員をサポートするとしている。
- 従業員には全通知期間(最低60日間)の間、給与を支払う。
- severance package(退職金)として16週間分の給与に加え、在籍年数に応じて1年あたり2週間分の手当てを追加提供する。さらに、少なくとも16週間分の GSU(Google 株式ユニット)の早期取得を加速する。
- 2022年のボーナスと残りの休暇を支払う。
- 影響を受ける従業員には、6ヶ月間の健康保険、就職支援サービス、移民サポートを提供する。
ref: A difficult decision to set us up for the future | Google
上記が本当だとするとなかなかすごい内容だ。例えば、Google に10年働いている人がいて、20万ドルの年棒(1ドル = 150円で計算すると3,000万円)だったとする。すると、、、
- は、給与の2カ月分ということなので、 3,000万 / (12/2) = 500万
- は、16週間+2週間 X 10(年)= 36 週間 … これは 9カ月相当なので 3,000万 / (12/9) = 2,250万
※ GSU については、各個人がどれぐらいどういう条件で取得しているかによるので割愛 - は、Comparably というサイトを見ると、大体4週間分(約1か月分)くらいの休暇があるようなので、前年の休暇がまるまる残っていたとすると 3,000万 / (12/1) = 250万
上記の ①、②、③ を単純に合計すると 500万 + 2,250万 + 250万 = 3,000万になる。ほぼ年棒に相当する金額を受け取れる計算になる。
さらにすごいのが、④ の6カ月間の健康保険、就職支援サービス、移民サポートの継続。ここまでのサポートは一般的な企業には難しいだろうし、影響を受ける従業員にとってはありがたいことだと思う。
また、The Burning Glass Institute のチーフエコノミスト Gad Levanon 氏は、次のように語る。
「これらの動きは、いくつかの意味では、負の発展の兆しだけではなく、AI が生み出したサービスへの需要の増加や自動化および生産性改善の兆しでもある。」
University of Washington’s Foster School of Busines の Jeff Shulman 教授は、次のように述べている。
「今回の解雇の動きに対する株式市場の反応は、かなり好意的である。多くのテック企業が、史上最高の株価を記録している。投資家は、実際に利益を重視しており、テック企業が経験した厳しい時期を好意的に受け止めている。数年前に追求していた “成長” ではなく “利益” を報酬としている。
したがって、解雇は続く。人々はそれに慣れ、残念ながら悲しいことに、解雇がニューノーマル(新しい常識)になりつつあるようである。」
⑤ 次に起こることは?
データは、2022年後半からテック産業での解雇が始まり、2023年にピークに達したことを示唆している。
非テックセクターでも広範囲にわたる解雇が見て取れる。UPS は、2024年1月に1万2000人の削減を発表したことで注目を集めた。
メディア業界も解雇を免れていない。2023年、業界の2万人以上が仕事を失った。2024年も変わらず、Paramount、NBC、Sports Illustrated、ロサンゼルス・タイムズなどの大手企業が、2024年初頭に大規模な人員削減を発表した。
銀行セクターも同様だ。Citigroup、Morgan Stanley、Deutsche Bank などの大手銀行が、2024年の解雇計画をすでに発表している。
これらの大量解雇が続いているにもかかわらず、労働市場は依然として強いように見える。米国経済は、2024年1月に35万3000件の求人を追加し、ダウ・ジョーンズの予想である18万5000件を大幅に上回った。しかし、失業率は予測の 3.8% に対して 3.7% で変わらなかった。
専門家は、最近の技術者の解雇が非テックセクターにどう波及するかについて意見が分かれている。
意見その1
現在の求人市場を見ると、今のところ影響は見られていない。結論を出すには早く、判断するにはまだ早い。しかし、2023年を振り返ると、テック産業で多くの解雇があった。それにもかかわらず、その影響は見られていない。通常、政府はテック業界を情報セクターと定義するが、その中でも非常に高い解雇率は見られなかった。
多くの企業が解雇を発表し、メディアで大きく報道されたが、全体で見ると、解雇されたのはおそらく雇用の約 1% 程度だった。
したがって、解雇による失業率は、歴史的な低水準に近いままである。
意見その2
これまでのところ、株価が非常に高く、失業率もかなり低いため、経済全体にはまだ波及していないといえる。
しかし、この状況が続く場合、いつかは企業も個人も支出を削減しなければならず、それはテック産業をはるかに超えた影響を及ぼすことになるだろう。
まとめの見解
アメリカで働いている以上、リストラはいつ自分に起きてもおかしくないし、自分の周りにいる人に起きても不思議はない。
こういうことが起きないように祈るのではなく、たとえ自分の身に起きても対応できる状態を整えていくことが重要だ。また、友人や知人が仕事を失った場合は、自分の知り合いを紹介したり寄付をしたりといったできることをしていくのが大切。
欧米で流行りだした FIRE(Financial Independent and Retirement Early)も、こういった事態を想定しているからかなと感じている。
ref: FIRE movement | Wikipedia
チームごと解散なんてことになると、もはや個人のレベルでは避けられない。運みたいなもの。
日々、健康に気を使い、浪費せずに節約し、節約分の多くを投資に回すしか今のところ自己防衛策が思いつかない、40代おっさんの感想でした。