ノンアルコールビール市場で成功した Athletic Brewing の戦略 – CNBC の動画紹介
どうも、gochaです。
今回は、CNBC の YouTube 動画『How Athletic Brewing Co. Became The King Of Non-Alcoholic Beers』を紹介します。
ざっと翻訳 ときどき補足
動画をざっくり翻訳しながら、補足と見解で補います。
間違った訳があるかもしれません。「え?」と思ったときには、ぜひオリジナルの動画を参照してください。
はじめに
Athletic Brewing Company 共同創業者の Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「起業家になるなんて、考えたこともありませんでした。金融業界でやりがいがあり、刺激的で挑戦的な素晴らしい仕事をしていたからです。毎晩、仕事でのディナーや友人や家族との集まり、結婚式、バチェラーパーティー、バーベキューなどで忙しく過ごしていました。基本的にすべてが飲みの場で、他に適当な選択肢や逃げ道がありませんでした。朝5時に起きては運動し、翌日に備えてシャープな状態を保つ必要がありました。」
Athletic Brewing Company は、コネチカット州ミルフォードを拠点とする中規模のクラフトビール醸造会社です。他のクラフトビール醸造会社と同様に、Athletic Brewing も IPA、ダークビール、ライトビール、ヘイジー、スパイス、夏にはフルーティなビールなどのラインナップを製造しています。もちろん、すべてがミレニアル世代に人気のミニマリストな缶デザインです。他の醸造所と同様に、大きな産業用のホップの樽や、いくつかの醸造賞が展示されているかもしれません。しかし、ここで見つけることのできないものがあります。それは、アルコールです。
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「ノンアルコールビールは、これまで非常にニッチで特定の需要だと考えられてきました。人口の1%だとか、1%の時間で飲むものだというように。しかし、多くの人は、ほとんどの時間にアルコールを飲んでいません。この市場は、完全に過小評価されています。」
昨年、Athletic Brewing の収益は9000万ドルを超え、ビールの販売量は25万バレルを超えました。
「Barrel(バレル)」という単位は、国や対象によって量が異なります。Wikipedia によると、アメリカにおいてビールの 1バレル は 31ガロン になるそう。1ガロン は 約3.785リットル なので
- 25万 x 31 = 7,750,000ガロン
- 7,750,000 x 3.785 = 29,333,750リットル
というわけで、Athletic Brewing の 2023年度の販売量は、約29,333,750リットル。
Nielsen IQ(市場調査企業)によると、Athletic Brewing は現在、米国でノンアルコールビールにおけるトップブランドであり、ノンアルコールビール市場の19%を占めています。
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「小さい規模から徐々にスケールアップしてきただけです。コミュニティや顧客の支援や需要が急速な成長をもたらし、4年で3つの醸造所を建設し、米国トップ15のクラフトビール醸造会社になりました。」
では、このスタートアップのクラフトビール醸造所が、スーパーマーケットの棚で従来のビール会社を凌駕できたのはどうしてでしょうか。しかも、アルコールなしで。
アメリカのビール文化
アメリカでのビール文化は、何世紀にもわたって続いています。先住民のビール製造者からドイツ移民まで。醸造産業は都市を築き、地元のビール会社が巨大な企業に成長しました。アルコールを禁止する禁酒法が制定され、その後、廃止になりました。野球チームや球場にビールブランドの名前が使用されるようにまでなりました。ビール産業は、小規模から大規模に、そして再び小規模へと変化しています。ビールは私たちとともにあり、穀物を泡立つアンバーエールに変えてきました。アメリカが成長し進化するにつれて、私たちの好みも変化しました。飲酒習慣も進化するのは当然のことではないでしょうか?
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「私は、これまで非常に尊敬されてるバイサイド企業で働いていました。おそらく200のセルサイドの取引先と常にやり取りをし、すばらしいコミュニケーションと協力関係を築いていました。そこから、誰も私の電話を取ってくれない醸造業界に映ったことが最も困難だったと言えます。誰もこの仕事に関心を持たず、話し合うことすらしてくれませんでした。」
補足ですが、Bill Shufelt 氏は、Steaven Cohen 氏が率いる Point 72 という320億ドルの資産を管理するヘッジファンドで働いていました。
バイサイド(Buy Side)は、証券やその他の金融商品を購入、運用する側を指し、信託銀行、年金基金、ヘッジファンドなどが含まれる。
セルサイド(Sell Side)は、証券を発行、販売、取引する側を指し、投資銀行、証券会社、ブローカーなどが含まれる。
Athletic Brewing Company 共同創業者の John Walker 氏は、次のように述べています。
「彼が私に電話をしてきて、『電話を切らないで。これは、ノンアルコールの話なんだ』と言いました。」
ノンアルコールビール市場の成長
以前はニッチだったノンアルコールビール市場は、過去5年間で大きく成長し、2020年にはその売上が39%増加しました。対照的に、ビールとサイダーの成長率は、わずか13%にとどまりました。
John Walker 氏は、次のように述べています。
「私は、この製品の必要性と需要を完全に理解していました。人々が満足でき、ノンアルコールビールに対する偏見をなくす優れたノンアルコールビールの必要性も感じました。課題は、クラフトビール愛好家をも含む誰もが楽しめるおいしいノンアルコールビールを作ることでした。私たちは、IPA などの特定のビールのレシピ設計とレシピ構築に取り組む際に、逆から考えました。どのような体験をしたいのか。麦芽の特性をどのように表現するのか。ホップの特徴をどのように表現するのか。」
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「バッチ20〜30のあたりで、IPA が本当においしくなってきたと感じました。私にとって非常に楽しい瞬間でした。それは本当に衝撃的で、このカテゴリーでこれまでにあったものすべてを超えるほど素晴らしかった。風味が際立っており、原料は非常に高品質でした。その時点で成功することを確信しました。」
現在、世界のノンアルコールビール市場は200億ドルの価値があり、2033年までにこの数字は400億ドルに達すると予想されています。2022年から2023年にかけて、米国のノンアルコールビールの販売は32%増加しました。この需要の高まりは、健康志向のトレンドの高まりに大きく影響されており、より多くの人々がアルコールを避けるようになっています。
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「以前よりもはるかに良い情報とデータが人々の手元にあり、それが健康とウェルネスを本物のメガトレンドとして築いていると考えています。」
John Walker 氏は、次のように述べています。
「人々は、自分の健康についてますます意識しています。手首に装着したデバイスで健康状態を管理し、スマホでデータを確認し、あらゆる行動について多くを学んでいます。これが、人々が健康的な選択肢を求めるようになった理由のひとつです。」
Athletic Brewing は、2017年に設立されました。まだ、ノンアルコールビールの普及につながるパンデミックの前でした。
John Walker 氏は、次のように述べています。
「この製品とプロセスを家庭での醸造レベルで構築しました。そして当時、現在でも、ノンアルコールビールに特化した世界最大のクラフトビール醸造所のひとつとなりました。我々は、どのようにして伝統的な醸造設備で製品を製造し、スケールできるかを考えなければなりませんでした。」
以来、Athletic Brewing は、ハイネケンやバドワイザーなどの確立されたブランドのノンアルコールビールをすべて上回りました。さらに驚くべきことに、Whole Foods のデータによると、Athletic Brewing は 同店でのトップ売上ビールブランドで、しかも、アルコール入りのビールを含めた話です。
Whole Foods は、米国のスーパーマーケットチェーン。主に、オーガニック食品や自然食品を取り扱い、健康志向の高い人々に人気です。
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「Whole Foods に持ち込んだのは、John のガレージでラベルなしのボトルに詰めたビールでした。それを地元の Whole Foods に持ち込むと、すぐに地域のマネージャーにつなげてくれました。彼らは『これを待っていた』と言ってくれました。」
では、この製品の対象は、誰なのでしょうか。Athletic Brewing の創設者たちにとって、お酒を飲む人も飲まない人も対象です。
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「Athletic Brewing は、アルコール産業を打ち負かすことや、アルコールを取り除くことを目指しているのではありません。何千年もの間、人々はアルコールを楽しんできました。しかし、忙しい現代生活において、アルコールは週に1、2日飲むのが理にかなっています。Athletic Brewing は、残りの5日間も楽しめるようにしたいと考えています。」
John Walker 氏は、次のように述べています。
「現在、我々が注力しているのは、フットプリントの拡大です。ビールと同様にタップから提供するノンアルコールのドラフトビールを導入しています。これにより、このカテゴリのスティグマをさらに取り除き、人々が気軽に注文できるようになります。メニューの一番目立つところに載せ、タップハンドルも設置する予定です。」
Bill Shufelt 氏は、次のように述べています。
「最初から、お客さまがその選択に誇りを持てるようにしたいと考えていました。Athletic Brewing のビールは、ラベルを見せながら飲むためのビールです。力強さを感じさせるものであり、バーやレストランで手に入るどのビールとも同じくらい高品質なビールを缶に詰めています。」
まとめ
Athletic Brewing のビールが素晴らしいのは、本当にIPAを飲んでいるような感覚にしてくれる部分です。私も妻のmazeもIPA好きなのですが、IPA好きでもしっかりと美味しいと思えるノンアルを開発してくれた同社に心の底から感謝しています。
ちなみに、アメリカにおける「ノンアルコール飲料」の定義は、アルコール度数が0.5%以下です。Athletic Brewing のパッケージにも、「Non-Alcoholic Brew | Contains Less Than 0.5% Alc/Vol」と記載されていて、カロリーも1缶(355ml)あたり IPA が 65カロリー、Hazy IPA は 70カロリーあります。
日本で提供されているようなアルコール 0.00%、カロリーもゼロというわけにはいきませんが、Athletic Brewing は、ぜひ IPA好きのひとに試してもらいたい一品です。
最近ではいろいろなフレーバーも増えてきていますし、メディアで取り上げられる機会も増えてきたので、これからの活躍に益々期待しています。